コラム
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公開日2019.11.25最終更新日2020.07.30豊胸基礎知識
変わりつつある日本の豊胸術……今後の豊胸事情
顔の整形手術をはじめ、ここ十数年ほどで美容クリニックの施術は、日本女性にとって身近なものになってきました。堂々と整形をしたことをSNSで公表する女性もいるほどです。
もちろん豊胸術も同様で、多くの女性が美容クリニックでバストの悩みを解決しています。しかし、豊胸術を受ける人が増えるにしたがい、トラブルも明るみになってきました。術式の問題、ドクターの技術、使用する成分など、問題は多岐にわたります。
トラブルが起きているのは、ほんの一部のクリニックではありますが、何が問題だったのかは、他のクリニックも一緒になって考える必要があるでしょう。そして、より安全な方法、トラブルを招かない施術を提供するのが、私たち美容クリニックの努めでもあると思っています。
今回は、豊胸術でトラブルが起きる原因と解決策、そして今後の豊胸術の展望について、医師の立場からお話しします。
目次
たびたび問題になる豊胸術とその理由
シリコンバッグが破裂する事故
シリコン製のバッグをバストの中に挿入する方法は豊胸術の中でも歴史が古く、1960年代から行われてきました。しかしその危険性が指摘され、使用が中断されたこともあります。理由としては、シリコンバッグが破裂する恐れがある点、もう一つは強い刺激でバッグが破れた場合に、中身がバスト内に飛び散り回収できなくなってしまう点です。
また、フランスのあるメーカーのシリコンバッグは発がん性を指摘され、各国で使用中止が宣言されました。実際、シリコンバッグを挿入した女性が血液のがんになり死亡した例や、長年入れたままになっていた挿入物の周囲の組織でリンパ腫が発生した例もあります。
こうしたトラブルを踏まえて、シリコンバッグが万が一破れても、中身が塊としてバスト内に残り除去手術ができるものや、体に吸収されて尿として排泄されるよう生理食塩水をバッグに入れるなどの手法もとられるようになってきています。
現在日本では、厚生労働省が認可したシリコンバッグもあり、乳がん手術後の再建にも用いられています。確かに一度手術すれば、バッグが破れない限り、豊胸したバストはそのままなので、コスパはいいかもしれません。
しかし、赤ちゃんが生まれて授乳するときになって、母乳マッサージができないとか、乳腺炎になるなどのトラブルも多々起きています。最近では有名女性作家が乳がんになったことを公表しましたが、彼女は若いころに入れたシリコンバッグのために、これまでマンモグラフィー検査を受けられなかったと明かしています。
今の幸せも大切ですが、将来の妊娠出産、高齢になったときに受ける検査や手術のことをよく考えて、豊胸術を選択する必要があるでしょう。
ヒアルロン酸を何度も注入するうちに大きなしこりが発生
ヒアルロン酸注入法は注射をするだけの非常に簡単な豊胸術です。しかし、効果はあくまでも一時的で、バストの大きさが維持できるのは半年から2年くらいと言われています。実際、2010年の「アンチエイジング医学世界会議」で発表された報告によれば、ヒアルロン酸注入から2年後の調査で、ヒアルロン酸の残量は、1回注入の人で17%、2回注入した人で21%だったそうです。つまり、2年後にはほとんどのヒアルロン酸が失われていることになります。
このため、ヒアルロン酸を一度注入した人の多くが、1~2年ごとに注入を繰り返すようになります。ところが、ヒアルロン酸を何度も注入していると、バスト内でしこりができやすくなることがわかっています。小さなしこりであれば外見上問題ありませんが、時にはゴルフボール大のしこりができてしまうことがあります。そうなると、バストの形にも影響がでて、外科手術で取り出すことになります。
トラブルはしこりの問題だけでなく、注入するヒアルロン酸の種類にもあります。事実、海外では認可されていないヒアルロン酸が、日本では医師の自己判断で使われ、アレルギー反応や、血管が詰まり肺の組織が壊死するなどのトラブルが起きています。自由診療なので、医師の判断で使用すること自体は法律上問題ありません。しかし、海外で起きているトラブルに目をつぶって使用を続けている医師がいることは、十分考慮しておく必要があるでしょう。
脂肪吸引と注入、どちらもドクターのセンスと技術が必要
脂肪注入法では、脂肪の採取でトラブルになっているケースが多々あります。豊胸術のために脂肪を別の場所から採取する場合、採取に時間をかけたくないと、1ヵ所から急激に脂肪を吸引し、術後のボディラインにへこみができたり、左右差が生じてしまったりなどのトラブルが後を絶たないのです。本来、脂肪吸引が施術のメインであれば、脂肪を除去したあとのデザインを念頭に、広く浅く、不要な脂肪を取り去るのですが、それを怠ってしまったために起きるトラブルです。
採取した脂肪は、そのままでは不純物が含まれていてバストに注入することはできません。そのため、各クリニックが脂肪の純度を高めたり、バスト内での定着率を上げたりと工夫をしています。この工程がうまくいっていないと、バストに注入した脂肪が死滅して、バスト内で異物として残ってしまいます。結果として、不要なしこりができて、時には乳がんと間違えられてしまうこともあります。
また、脂肪を注入する際には、バストのどこにボリュームを持たせたいか、形はどうしたいかなどを踏まえて、カニューレを動かす必要があります。ドクターの技術の差がもっとも現れる部分です。未熟なドクターの場合、カニューレを無駄に動かし、バスト内の組織に傷をたくさんつけてしまうことがあり、それが原因でしこりや膿瘍が発生してしまう可能性があります。
ただ大きくすれば良いという考えが招くリスク
「とにかく大きくしたい!」という患者さんの要望に対して、NOの言えないドクターが招くトラブルもあります。もともと小さなバストの人の場合、大量の注入物を入れてしまうと、バストの皮膚が悲鳴をあげます。その結果、皮膚下でひどい内出血が起こり、長期間治らないケースがあるのです。注入した傷口から、ヒアルロン酸 や注入した脂肪が 漏れて出てきてしまったという事例も報告されています。
また、ヒアルロン酸は一度に大量にかたまりとして注入 すると、ヒアルロン酸の周囲に硬い膜ができます。外から触ってもわかるような硬いしこりになるので、いくら大きくしたいと患者さんが希望しても、ドクターの側で適正量を伝えて、納得してもらう必要があります。
海外における豊胸術
豊胸術数ナンバー1はアメリカ
日本でも豊胸術を受ける人が増えているとはいえ、海外に比べればまだまだ少ないほうです。それに引き換え、海外のモデルや女優さんを見ると、明らかに何かを入れて大きくなったバストを強調している人が目立ちます。
とくに豊胸術を受けている人が多い国は、ダントツでアメリカです。医療機関の問診票には「豊胸手術をしているか?」という質問があるくらい、一般的な美容整形のひとつです。アメリカでの豊胸術は、ほとんどがシリコンバッグ挿入法というのも、おもしろい傾向だと感じます。一度の手術で、希望の大きさにできるため、合理的なアメリカ人の性格に合うのかもしれません。
たくさんの人が豊胸術を行っている一方で、豊胸後の痛みや、大きくし過ぎた後悔から、シリコンを除去する手術を受けている人も目立ちます。
整形したことがわかる仕上がりが当然の韓国
整形大国と呼ばれる韓国。日本人も男女を問わず、韓国へ整形手術のために渡航する人は少なくありません。料金が日本の半分程度だったり、経験豊富なドクターが多かったりと、罪悪感なくクリニックに行けるのが大きな理由だと想像できます。豊胸術の種類は日本と同様で、シリコンバック挿入法、脂肪注入法、ヒアルロン酸注入法の3つがメインとなっています。
韓国内では、「美しい」ことは「良いこと」とされ、親がお金を出して子どもに整形をさせることも多いようです。しかも、整形をしたことを隠さない文化があります。ですから、豊胸術にしても、ビフォアーアフターがはっきりわかって当たり前。バレるほど変化させることが良い豊胸術と捉える人が多いようです。
日本人が韓国で豊胸術を受ける際には、日本人らしい施術をしてもらえるとは思いますが、言葉が通じない場合には、写真を見せるなど、具体的なオーダーをしないと大きすぎるバストになってしまうかもしれません。
未熟なドクターの施術が横行する国も
中国は就職活動のために顔の美容整形をする富裕層が多いことで知られていますが、豊胸術の需要も急激に増加しているそうです。その需要にドクターの人数や教育が追いつかず、未熟な豊胸術によるトラブルが多発しています。シリコンバッグがバスト以外の場所に移動したり、うつぶせになっただけでバッグが破裂したりなどの事故も起きています。それでも中国の豊胸術人気は上昇しています。
南米ブラジルやヨーロッパでも豊胸術は人気で、夫が妻に豊胸術をプレゼントすることもあります。パートナーから整形や豊胸を勧められるというは、日本人の感覚からすると、少し寂しい気持ちもするのですが、いかがでしょうか。
今後の 豊胸術はより安全なものを選ぶことが重要
これからの日本で流行しそうな豊胸術
海外では「豊胸した!」とわかるほど大きなバストが魅力的とされています。しかし、日本のクリニックで豊胸を希望する人の話を聞くと、「できるだけバレずに」「自然な仕上がりに」と希望する人が圧倒的です。
そう考えると、ある日突然大きなバストに変身する、挿入や注入式の豊胸術は、日本人の性格には少し無理があるのかもしれません。では、どんな豊胸術が向くのかと言えば、近年、注目されつつある「バストを育てる」というコンセプトの豊胸術です。
何かをプラスしてバストを大きくするのではなく、自分のバストが徐々に成長していく施術なので、「体重が増える」とか「筋肉をつける」のと変わりありません。これまでにないナチュラルな豊胸術は、美容整形に抵抗がある人でも受け入れられるのではないでしょうか。
自分のバストそのものが大きくなっていく
「自分のバストが育っていく」というコンセプトで生まれた豊胸術は「成長再生豊胸」とネーミングされています。もともと体内にある、体の成長や、傷を修復する役割を持つ「成長因子」をバストに注射し、その成長因子がバストの中の乳腺と脂肪を育てるしくみです。
処置後のバストの中身は、異物ではなく、自分自身の乳腺と脂肪で満たされます。触った感触も、仰向けになったときの流れ具合も、走ったりジャンプしたりする時の揺れ方も、本物のバストとまったく同じ。というより、本物のバストそのものというのが、成長再生豊胸の素晴らしいところです。
美と健康、その両方を手に入れられる豊胸術
安全面でも、成長再生豊胸は他の豊胸術とは比較になりません。体内に異物を残す豊胸術ではないので、大きなしこりができたり、アレルギー反応が起きたりすることはほとんどありません。注入時に麻酔薬を使うので、事前にアレルギーについて確認しますが、それ以外に不安な要素はほぼ見当たりません。
さらに、将来に向けての「安全」も重要なポイントです。特に、若くして豊胸術を行う人にとって大切なのは、赤ちゃんに母乳をあげられるのかということです。先に述べた通り、シリコンバッグ挿入法では、母乳マッサージが難しく、バッグの圧迫によって乳腺炎を起こす可能性があります。一方、異物の残らない成長再生豊胸は、問題なく授乳ができます。もちろんマッサージもOKです。
また、年齢があがってくると、乳がんの心配が出てきます。日本人女性の14人に1人が乳がんに罹患すると言われています。定期的な検査は、絶対的に必要ですが、これまでの豊胸術であれば、検査が困難で、あらかじめ技師に豊胸していることを伝える必要がありました。しかし成長再生豊胸であれば、マンモグラフィーやエコー検査も問題なく受けられ、触診で豊胸したことがバレることもありません。
見た目に美しいバストは確かに魅力的ですが、それ以上に、将来の安心と安全を考えた豊胸術選びが必要だと、私たち南クリニックでは考えています。美しさは健康の上にあるものです。患者さんの美と健康、その両面をサポートできる豊胸術を、これからも研究し提供していくクリニックでありたいと思っています。
成長再生豊胸には、
成長再生豊胸Fと成長再生豊胸W
の2種類があります。
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